測定器の校正
測定器の校正とは
「測定器の校正」の「校正」については、「JIS Z 8103:2019 計測用語」で以下のように定義されています。
JIS Z 8103:2019 計測用語「校正」
指定の条件下において,第一段階で,測定標準によって提供される不確かさを伴う量の値とそれに対応する指示値との不確かさを伴う関係を確立し,第二段階で,この情報を用いて指示値から測定結果を得るための関係を確立する操作。
要するに、「校正」とは基準とする計量器と比較して被校正対象である測定器の指示値がどの程度ずれているか確認することであり、その信頼性を表す尺度として不確かさを明示することです。
また、「JIS Z9090:1991 測定-校正方式通則」では、以下のように記述されています。
JIS Z9090:1991-測定-校正方式通則
- 校正方式
3.1校正
3.1.1校正の作業 計測器を校正する作業は,次の点検及び(又は)修正の二つから構成する。
(1) 点検 点検では,修正が必要であるか否かを知るために,測定標準(以下,標準という。)を用いて測定値の誤差を求め,修正限界(3.3.4参照)との比較を行う。
(2) 修正 修正では,計測器の読みと測定量の真の値との関係を表す校正式を求め直すために,標準の測定を行い,校正式の計算又は計測器の調整を行う。
ここでは、点検と修正を校正と定義しています。
品質マネジメントシステムに関する国際規格である ISO9001:2015 では、「7.1.5.2 測定のトレーサビリティ」の中で測定器の校正に関して下記要求事項があげられており、認証に際しては実施することが求められています。
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
測定のトレーサビリティが要求事項となっている場合、又は、組織がそれを測定結果の妥当性に信頼を与えるための不可欠な要素とみなす場合には、測定機器は、次の事項を満たさなければならない。a) 定められた間隔で又は使用前に、国際計量標準又は国家計量標準に対してトレーサブルである計量標準に照らして校正若しくは検証、又は、それらの両方を 行う。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いたよりどころを、文書化した情報として保持する。
ISO9001:2015 - 7.1.5.2 測定のトレーサビリティ
b) それらの状態を明確にするために識別を行う。
c) 校正の状態及びそれ以降の測定結果が無効になってしまうような調整、損傷又は劣化から保護する。
通常は、台帳登録された測定器を定められた校正周期にしたがって校正し、その校正結果および有効期間を台帳に記録します。なおその際、校正に用いる基準器は、国家基準との間でトレーサビリティがとれたものを使用します。また、社外検査機関に校正を委託する場合は、国家基準につながるトレーサビリティを証明できる機関に委託します。
マスターゲージ(基準ゲージ)の校正
マスターリング、マスターブロックとは・・・
比較測定器を使って測定する際に用いる基準ゲージ(マスターゲージ)のことで、内径・外径用のリング状のものをマスターリング、高さや幅用のブロック状のものをマスターブロックと呼ぶ。ちなみに、この基準ゲージからの差を求める測定方法が比較測定である。
「比較測定器 ③ :マスターゲージ(基準ゲージ)」で説明したように、「比較測定器」を使用して測定を行う場合、「測定部位の寸法に合わせて予め準備したリングマスターやブロックマスターなどの「マスターゲージ(基準ゲージ)」と比較して、基準ゲージからの差を求める」ことを行います。したがって、この比較対象とする「マスターゲージ(基準ゲージ)」がしかるべき精度を持っていることが必要です。そのために、マスターゲージ(基準ゲージ)は定期的に校正を行うことで精度を保証します。
具体的には、上記のISO9001:2015要求事項 7.1.5.2a) に対しては、校正用として準備した高精度のマイクロメータやダイヤルゲージを使用して、「マスターゲージ(基準ゲージ)」との比較を実施し、あらかじめ決められた公差内に収まっていることを確認し、その内容を台帳に記録します。なお、ここで校正用に使用するマイクロメータ、ダイヤルゲージ、基準ブロックは校正され、国家基準につながるトレーサビリティを証明できなければいけません。当社では、こうした校正に使用する基準ブロック、基準測定器については、国家基準につながるトレーサビリティを証明できる社外機関に依頼して校正しています。
ISO9001:2015要求事項 7.1.5.2b) に関しては以下を実施します。
校正され、合格となったマスターには、その有効期限(通常は1年)がわかるように明示します。図の例では、マスター表面に緑のペイントマーカーで”10”と書かれたのがそれで、緑は特定の年を示しており、その年の10月までが有効期限ということを意味しています。なお、有効期限を明示したシールの添付、多色結束バンドの使用など有効期限を識別する方法は様々あります。
以上は「マスターゲージ(基準ゲージ)」でも説明しましたが、比較測定器に使うダイヤルゲージや限界ゲージなどの他の測定器についても、基本的に同様の手順で校正管理を行います。