同心度・同軸度と偏肉
同心度、同軸度について
適応形体 | 幾何公差の種類 | 幾何特性の種類 | 記号 |
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単独形体 (データム不要) | 形状公差 幾何学的に正しい形体(例えば,平面)をもつべき形体の形状偏差に対する幾何公差 | 真直度 平面度 真円度 円筒度 線の輪郭度 面の輪郭度 | |
関連形体 (データム要) | 姿勢公差 データムに関連して,幾何学的に正しい姿勢関係(例えば,平行)をもつべき形体の姿勢偏差に対する幾何公差 | 平行度 直角度 傾斜度 線の輪郭度 面の輪郭度 | |
位置公差 データムに関連して,幾何学的に正しい位置関係(例えば,同軸)をもつべき形体の位置偏差に対する幾何公差 | 位置度 同心度 同軸度 対称度 線の輪郭度 面の輪郭度 | ||
振れ公差 データム軸直線を中心とする幾何学的に正しい回転面(データム軸直線に直角な円形平面を含む。)をもつべき形体 の振れに対する幾何公差 | 円筒振れ 全振れ |
1)定義と図示例
同心度、同軸度は関連形体に適用される位置公差であり、同軸度は”データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線のデータム軸直線からの狂いの大きさ”、同心度は”平面図形の場合のデータム円の中心に対する他の円形形体の中心の位置の狂いの大きさ”のことです。
下図は、同心度および同軸度の図示例を示したものです。
2)公差域(許容域)
下図は、同心度、同軸度の公差域(=許容域)を示しており、同心度では”データム点Aを中心とする直径φtの円形の内部”、同軸度では”データムに一致する軸線を持つ直径φtの円筒の内部”が公差域(許容域)です。
1)項の図示例の場合、同心度の場合は”外側の円の実際の(再現した)中心は,データム円Aに同心の直径0.1の円の中になければならない”、同軸度の場合は”内側の円筒の実際の(再現した)軸線は,共通データム軸直線A−Bに同軸の直径0.08の円筒公差域の中になければならない”ことを意味します。
要するに、同心度はある断面(図示例では、A-A断面)での中心のズレに対してφt内に収まるよう要求しているのに対し、同軸度は、円筒の軸中心の全体に亘って中心のズレに対してφt内に収まるよう要求しています。ただし、同心度、同軸度とも ◎ で図示されるのでどちらなのかわかりにくいですが、図面での見分け方としては、1)項の図示例からわかるように、同心度は断面の円、同軸度は横から見た図の径に対して図示されるのに留意します。
3)測定方法
同心度、同軸度の測定方法としては、真円度測定機、センター支持やVブロックによる読み取り法、三次元測定機などがあります。
現場的な測定方法としては、ダイヤルゲージを用いた直径測定法があり、kensatoolsの真円度測定器はこれに当たります。その際に留意するべきは、以下の項目です。
- 同軸度であっても、対象となる径の幅が小さい場合、同軸度≒同心度とみることも可能である(つまり、ある直径で代用できる)
- 内径・外径の同心度や上記の場合で、偏肉を代用特性にできないかを検討(偏肉であれば、比較的容易に測定できる、偏肉については次項による)
kensatoolsの同心度測定器は直径法を用いたものですので直径の測定方法を適切に選択する必要があります。
データム径の中心を固定した状態で回転させて、対象径の最大、最小の差、つまり同心度を読み取ります。下図は、データムの内径をピン2点ガイドや円形ガイドで固定し、同心度の指示された外径にダイヤルゲージを当てて同心度を測定しています。
図.各種外径同心度測定器
偏肉測定器
内径・外径の同心度の場合(例えば、リング形状)、偏肉を代用特性として使用することができます。偏肉であれば、データム径の中心を出す必要がないため、比較的容易に測定できます。
偏肉とは、リング形状のような対象物について外径に対して内径(あるいは、内径に対して外径)の心ズレを評価するもので、肉厚の差のことです。
図において、外径に対して内径の心ズレがΔtある場合、心ズレの方向に肉厚の偏りが発生します。ここで最大肉厚を tmax、最小肉厚を tmin とすると、偏肉は以下の式で表されます。
偏肉 = Δt × 2 = tmax ー tmin ⇒ 同心度の代用特性
この場合、偏肉は心ズレΔtの2倍になるので、そのままでφtの同心度に代用できるというわけです。
下図はリング形状のワークに対する偏肉測定器です。
内径ガイドとダイヤルゲージで肉厚を測ります。その際、ワークの外径を下部のガイドで支えて測定し易くしています。内径ガイドと外径ガイドに押し当てつつ、ワークを回転させてダイヤルゲージの最大値の最小値の針の振れを読み取ります。ここで最大値と最小値の差が偏肉(≒同心度)となります。